ひとつの新薬が誕生するまで
新薬が誕生するまでの道のりは長い
新薬開発の一連の流れを把握しておくことは、これから新薬開発に携わる看護師にとって重要なことです。薬は誰でも簡単に入手可能な日用品の一部で、多少の体調不良なら薬を適切に使用することですぐ改善します。そのような生活を可能にしたのは、次々と開発されている新薬の存在があるからです。すべての病気を薬で完治させることはできませんが、薬で完治させられる病気は着実に増え続けています。
日本で使用されている医薬品は、医師の処方が必要な「医療用医薬品」と「要指導医薬品」、「一般用医薬品」のすべてを合わせて約2万6,000品目にまで達しています。それだけ多くの種類の薬が開発されてもなお十分な治療ができない病気はあり、今ある医薬品では治療が難しい新たな感染症も出てきています。ひとつの新薬が実用化されるまでには、途方もない時間とコストがかかります。しかし、病気が存在する限り新薬開発が終わることはありません。今ある薬の効果をさらに高めるための研究開発も必要です。
新薬開発は原料探しからはじまる
新薬を作るためには、そのターゲットについてよく知る必要があります。その薬によって治したい病気の仕組みを解明し、どのような成分が有効なのかを探します。新薬開発を行なっている企業や研究機関は、新薬の原料となりうる化合物の情報から候補となる化合物をピックアップします。候補が決まったら、効果や安全性についての検証を徹底的に行います。新薬開発のスピードと精度を上げるため、コンピューターを用いての検証も行われます。
成功する確率は極めて低い
薬の使用はひとつ間違えば命に関わることなので、新薬として自信を持って世に出せるまでには何度も繰り返して検証を行う必要があります。長い時間をかけて薬が完成すると、ようやく試験の段階へと移行できます。細胞や動物を使っての非臨床試験で有効性や安全性についての基準をクリアしたら、人間の身体で有効性や安全性を検証する臨床試験が行われます。厚生労働省に新薬として承認してもらうためには、臨床試験(治験)で有効性や安全性を証明する必要があります。治験ですべて問題ないと判断できるところまで来ると、製造・販売の許可をもらうための申請を行うことができます。
厚生労働省へ申請を行うまでにかなりの労力がかかっていますが、申請した薬が新薬として認められる確率は約3万分の1です。研究が開始されてから新薬になるまでには、9年から17年はかかるとされています。それでも、日本で開発される新薬は世界の中でも多いほうで、再生医療分野においては最先端をいく存在となっています。